2人の「つながせのひび」アフタートークアーカイブ(1)

12月17日(土)14:00の回
ゲスト:森岡りえ子さん(イラストレーター)
作・演出の中谷和代と、今回絵画制作を担当して頂いた森岡さんとのトーク。

<今回の企画と作品について>
絵本の原作を中谷が書き、絵を森岡さんが描く。そうしてできあがった絵本を元に中谷が演劇の脚本を書き、森岡さんが展示用の絵画を描く。というふうに、バトンを交互にパスしながら、積み重ねるように作品を創り上げていった。ストーリーに合わせた絵を制作していくことは、美術として使うことなど、気を配らなくてはならないことも多く、難しいことも多かったが勉強になった。(森岡)
舞台美術として使っている絵画やスケッチブックなども実際に森岡さんの過去の作品を使用している。

<演劇の設定について>
劇の登場人物である二人の男女は、森岡さんご夫婦をモデルにしている。ものをつくる情熱にそっと静かに寄り添ってくれる人の存在。夫婦でたまにすれ違ったり、それでもそれを乗り越えていく姿など。
実際に森岡さん夫婦に何度も会って、脚本を書き進めていくごとに、二人の生活を描きたいという想いが強くなっていった。(中谷)

<二人の出会いとこれまでについて>
中谷と森岡さんは大学の同級生。森岡さんは、ソノノチ公演のポストカードを書いてもらったことをきっかけに、2013年から本格的にチラシのビジュアル担当として関わるようになった。チラシだけでなく、現在はソノノチの物販のイラストなどもお願いしている。

<劇場以外の場所で上演することについて>
劇場ではなく、ギャラリーで舞台を上演すること。絵と演劇が内容的にも空間的にも混じり合う状態。インスタレーション的な作品の実現。劇のための絵ではなく、劇も絵も、寄り添いながら空間に両立している。展示している場所で舞台を上演してもらう経験はなかなかないので、貴重な体験だった。(森岡)

<森岡さんの作品の変化について>
二人が出会った当時は、色は明るめでも暗い内容を描いていたが、最近は暗めの色味で明るい内容(希望のようなもの)を描いている。

<同年代の二人が20代から30代になって>
20代は自分の世界をひたすらに表現するばかりだった。30代になって、互いに結婚などをきっかけに、自分の子どもなど後の世代に、未来の人にどういうものをのこしていきたいかと考えるようになった。(中谷)
毎回作品を発表するたびに、誰に、どういう角度で発信しようかと考える。(森岡)

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12月18日(日)14:00の回
ゲスト:佐川綾野さん(切り絵作家)
作・演出の中谷和代と、切り絵作家として活動されている佐川さんとのトーク。

<佐川さんの切り絵作品>
実際の作品を持参して頂いた。白鳥の王子の物語の切り絵作品。心の中と外、物語の内と外の世界を表現している。普段から、女の子やお姫さまなどが出てくる童話的な作品が多い。少女性を大切につくっている。(佐川)
切り絵作品を1作品つくるには、30~40時間かかる。演劇を一本つくるには、稽古だけで70時間ほどかかる。

<本と自分の距離感>
小さい頃は、絵本など、本の世界を自分の身の回りのことに引き寄せて考えていた。しかし大人になってから、その本の世界感を客観的に体験できるようになる。そこに面白みを感じている。(佐川)
2人の「つながせのひび」も、絵の中の世界と現実を行ったり来たりする物語。客席で観るときはキャラクターに感情移入するが、キャラクターを通して絵本という媒体そのものに移入する。

<森岡さんとソノノチの共作について>
今回のストーリーや世界観は、森岡さんの展覧会に通って自身がインスピレーションをうけたものが多い。月やはしごのモチーフなども絵から着想を得た。(中谷)
絵と劇を交互に作りあげていくプロセスが、手紙のやりとりのような、交換日記のような作り方に見える。(佐川)
その通りです。森岡さんとのやりとりの中で互いにイメージを触発されて、新しいキャラクターやストーリーがどんどん生まれてきた。(中谷)

<なぜ、その手法なのか?>
佐川さんは切り絵、中谷は演劇という手法を、どうして選んだのか。
いろんな表現手法の中で切り絵を選んだのは、小さい頃から版画に憧れていたがやり方が分からず、版画に近い切り絵にチャレンジした。その時はまだ真似事のようだった。大学で版画を学び、改めて切り絵で作品をつくることに戻ってきた。今は、この表現が一番しっくりきている。(佐川)
中谷は大学ではメディアアート専攻だった。空間芸術というジャンルを通して、光や音などその空間にあるものをデザインすることに興味があり、そこから演劇や舞台演出に興味をもった。「人は人を想っている」というコンセプトを形にするのに、人の感情や関係性を扱う演劇という物語的な手法がぴったりだった。
今回の舞台も、お客さんがいろんなことに思いをはせることができる、双方向性を感じた。インスタレーションのような作品だった。(佐川)

 

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12月18日(日)17:00の回
ゲスト:岡安いつ美さん(エディター)
作・演出の中谷和代と、京都の文化を発信する「アンテナ」の編集をされている岡安さんとのトーク。

<作品の感想について>
・身近にいすぎてじっくり振り返ることのない、大切な人のことを考えさせられた。亡くなった父親を思い出した。大切な人との思い出を思い返すきっかけになる作品。(岡安)
・前作、1人の「つながせのひび」では、絵本の中から亡くなったおばあちゃんとの思い出があふれてくるという物語だった。自身の祖母の部屋の片付けに行った実体験、おばあちゃん子だった思い出が物を通して蘇ってきた体験をもとに、このシリーズを制作した。(中谷)
・登場人物のモデルについて。森岡夫妻のくれたインスピレーションが大きい。
・絵本に登場するひびちゃんとつきちゃんは、一緒に暮らしているが、あえて関係性を描いていない。パートナーや家族や仲間など、観る人それぞれの大切な人に置き換えて見てもらえたら。(中谷)
・演劇も、物語だけでなくなっているわけではない。光や絵や音楽も、大切な一部。各スタッフが連携しつつ、バトンを回しながら今回の作品が出来上がった。(中谷)

<「アンテナ」について>
音楽シーンをまとめるフリーペーパー。名前の由来:アンテナを高く伸ばして広く情報を受け止めてほしいことから。(発信側というよりは受信のアンテナを伸ばしてほしい願いが込められている。)
・楽曲情報だけではなく、音楽にまつわる様々な情報を取り上げている。(バンドTシャツの特集や、練習場所の特集など)
・冊子を作るにあたって、3ヶ月ほど時間がかかるので、その間にもスピーディに情報を発信したいことから、ウェブサイトも公開した。
・身近にアートや音楽を感じてほしい。意外とふたつが交わることがないことから、両方を取り入れている。(岡安)

<東京と京都>
・情報を発信していく活動の原動力はどこにあるのか?
→出身が関東なので、京都のことを知らない人や、京都にはじめて来た人にわかりやすく京都の文化を伝えていきたい。将来は、この媒体と地域情報をまとめるスキームを他地域にも持っていきたい。(岡安)
・地域によっての音楽事情の違いって?
→東京は大きすぎて、情報を得ていたとしても氷山の一角しか知れない感じ。京都は全体を見渡しやすい。地方はやはり、地域としての一体感があるかんじがする。

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